エンジニアがカスタマーサービス (CS) 組織を立ち上げてみた

ここ半年くらいカスタマーサービス (CS) をやってみてわかってきたこと書いてみた。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い

カスタマーサクセスは「ユーザーが困る前に問題回避する部分」を担う
カスタマーサポートは「ユーザーが困ってから問題解決する部分」を担う

という定義が一番しっくり来たので、いつもこの説明にしてます。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの両組織のマネジメントをしてますが、この記事はカスタマーサポートの話になります。また、ユーザーはtoC ではなくtoB です。

カスタマーサポートの心構え

「ユーザーからお問い合わせをいただく」とは、 ユーザーはすでに何かに困っている、問題が起きている という状態です。つまり「起きてしまった問題を素早く解決できるか? :thinking: 」が我々サポートチームの役割と考えています。

カスタマーサポートのツール選定

カスタマーサポート業務に使えそうなツールとしては4種類あります。

  • ビデオ会議
    • ユーザーと同じ画面を共有しながらサポートできる
  • 電話
    • 声のトーンでユーザーの感情を把握しやすい
  • チャット
    • 複数人からのお問い合わせに同時に対応できる
  • メール
    • 非同期のやり取りのため、お問い合わせ対応の作業時間をコントロールしやすい

どんなサポート対応を目指すのかを考えつつ、それぞれのツールの良し悪し比較を簡単な表にしてみた。

  ビデオ会議 電話 チャット メール
1対多の同時対応 × ×
画面共有 ×
対応記録 ×
非同期 × × ×
感情把握 ×
問題ヒアリングのしやすさ ×

お困りごとの背景などをユーザーと会話できること。少ない人数でなるべく多くのユーザーをサポートできること。この2点を考慮して「チャット」でのサポートを選んでみた。

お問い合わせ管理としてはZendesk が良い感じ。ただ今回はチャット機能の会話UI が最も重要だったのでIntercom を使うことにしました。

カスタマーサポートの重要指標

現状、重視している指標は「回答満足度」と「お問い合わせに対する初回返信までの時間」の2つです。

回答満足度

Conversation rating

直近3ヶ月の実績数値で、回答満足度88%です。

重要指標と言いつつも取り扱いが難しいのが回答満足度ですね。レストランでお会計の時に「いかがでしたか?」とスタッフに聞かれたら「美味しかったです」と答えるのが普通かと思います。でも、次の日に会った友達に「昨日のレストランどうだった?」と聞かれたら「値段の割に味は普通だったかな」と答えるでしょう。

なので、アンケート回答に点数だけでなくコメントと実際の会話の中身を確認しています。本当は、回答率を見たいのですがIntercom の管理画面レポートでは見れず。

お問い合わせのに対する初回返信までの時間

他社事例をヒアリング調査してみて、お問い合わせいただいてから4分以内に初回返信することを目標にしてみました。これが実際にやってみるとなかなか難しい。

  1. お問い合わせの内容を開く
  2. お問い合わせの内容を読んで理解する
  3. 過去のお問い合わせ内容を確認する
  4. 回答内容を考えてタイプする
  5. お問い合わせの回答を送る

各ステップ1分もかけられないので、かなり難しい。1ヶ月間の実績で平均4分39秒が最高記録でした。

初回返信で回答まで記載するのは難易度が高過ぎました。初回返信の速さにこだわるなら「お問い合わせありがとうございます。アカウントのご利用状況を確認してお答えしますので少々お待ちください。」など、一言お返事してから回答を送るが現実的です。ただ同じユーザーに毎回この返答すると、ボットぽくなるので良いユーザー体験なのかは謎。

今のところ、なるべく初回返信で回答までお送りしており、直近6ヶ月の初回返信までの経過時間は平均9分52秒でした。

Conversation remark

実績としてはまだまだですが、初回返信までの時間はサポートの体験指標として良さそう。

目標にしなかった指標

効率を表す指標は目標にしない方が良いと思います。ただし、効率を表す指標は常にモニタリングしてます。

お問い合わせから解決までの時間

1件のお問い合わせに必要な時間が短くなれば、1人のオペレーターが1日に対応できるお問い合わせ件数が増える。経営としては少ない人数でより多くのユーザー対応ができるので嬉しい。ユーザーからのお問い合わせもテンポよく解決できてWin-Winだ。何よりも、カスタマーサポートはコストセンターなので増やしたくない。

ユーザーの抱える問題を早く解決する事は良いこと。バランスを取りながらコストを調整するのも大事なこと。色々考えると効率を表す指標を目標にするのはメリットが多い。

でも、解決を急げば急ぐほど、ユーザーの求めるテンポを無視して急かしてしまう。 回転率が重視される飲食店で『食べ終わったなら席を空けておくれ』という圧力に近い(間違ったサービスではない)。

大事なのは、ユーザーと会話する時間をむやみに短縮するのは間違いだが、業務が非効率なのは嬉しくないので無駄は削減すべきだと思った。なので「お問い合わせから解決までの時間」はモニタリングするけれど、目標にしないことにした。

カスタマーサクセスとの連携

あるユーザーのお問い合わせの頻度はサービス満足度に関係します。サービスを使っていると自然と「この機能は何ができるのかな?」「これは出来ないかな?」など疑問が出ます。ある程度の頻度でのお問い合わせは問題がないですが、過剰な頻度であれば要注意です。

一定頻度を超えるお問い合わせを頂いているユーザーは、カスタマーサクセスに接続して、電話やビデオ会議でヒアリングとお困りごとをまとめて解消する接点を取るようにしています。

カスタマーサポートに求められるスキルとは?

ユーザーが困ってから問題解決する部分を担うのが役割で「起きてしまった問題を素早く解決できるか?」が仕事と捉えています。自分自身でフロント対応した経験を踏まえて、カスタマーサポートに求められるスキルは4つかな、と思いました。

  • ホスピタリティ(愛嬌のある対応)
  • 察する力(1を聞いて10を理解する)
  • 製品理解力(エンジニア以上に詳しくなる)
  • 表現力(文章・会話も含む言葉を選び)

自分が作った製品でもあるので「製品理解力」は十分ありつつ、新規事業の立ち上げ経験からいかに少ない情報で正解を選ぶか鍛えられたのか「察する力」も及第点かと思う。一方で、ホスピタリティは著しく乏しいけれども何とかやれている(と思いたい :roll_eyes: )。

Conversation summary (直近の個人スコアは回答満足度86%で、ややチームの平均値を下回る問題…)

及第点と言ったが「察する力」は曲者。特に、テキストでのやり取りでの難しさは痛感する。ユーザーが必ずしも正確な言葉を使うわけではないので、トンチンカンな回答することもある。それを含めて「察する力」がすごく大事だと思う。